公開講座「福島の火山と防災」

日本火山学会会長 / 平林順一


 二年前の平成12年には二つの火山が噴火しました。3月には有珠山が17年ぶりに噴火し、10,000人以上の住民が一時避難しました。また、6月から活動を始めた三宅島では、現在も大量の火山ガスの噴出が続いており、約4,000名の島民が帰島のめども立たないまま2年間におよぶ避難生活を余儀なくされております。富士山でも一時マグマの動きに関連した地震活動が活発化するなど、火山に対する関心が高まっています。日本火山学会は、約1,200名の会員が所属し、多方面から火山およびその周辺で起こる様々な現象について研究を行っております。多くの方々に火山の営み、火山噴火のしくみや災害などについて知っていただくために、研究の一端をわかりやすくお話する公開講座を各地で開催しております。日本の風光明媚な観光地の多くは過去の火山活動で形成され、われわれは登山やレクリェーション・温泉保養など火山から多くの恩恵を受けています.一方、ひとたび火山が噴火すると、森林や国土の被害だけでなく、時として多くの人命が奪われてきました。福島県でも、1888年7月15日の磐梯山の噴火では、山体の大半が崩壊し、大規模な岩屑なだれが発生して461名の死者が出ました。安達太長山でも、1900年に沼の中火口を形成する噴火が起こり、72名が犠牲となりました。同火口では、1996年以降小規模な噴火が断続的に発生しました。噴火を契機に、沼の平火口内では、火山ガス放出活動や地熱活動が活発となり、1997年に登山者4名が硫化水素ガスで中毒死する事故が発生しました。

 日本火山学会の公開講座は第9回を迎え、仙台市で日本火山学会秋季大会が開催されたのを機会に、4つの活火山を持つ福島市で開かせていただくことになりました。本日は地質学、地球物理学、地球化学が専門の3人の研究者に、福島県の火山の歴史や最近の火山活動、火山噴火と防災、火山ガスの災害などについてお話をしていただきます。これを機会に、皆様方に火山に対する理解を深めていただければ幸いです。




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2002年11月,日本火山学会: kazan@eri.u- tokyo.ac.jp