火山についてのQ&A

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「Q&A火山噴火」

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Question #6157
Q 先日、海嶺で形成された海洋プレートは海嶺から離れるにつれ厚くなり、それにともなってアイソスタシーを保つために海洋底はマントル内に沈み込むため、海洋底の水深も海嶺から離れるにつれて深くなる。との記述を見ました。
確かに海洋底の水深は深くなっているので、海洋プレートが厚くなっているのは何となくわかるのですが、海洋地殻の厚さが水深が深く(2000メートルは深くなっているように思えるのです)なっているのに見合うだけ海洋地殻が厚くなっているとは思えないのです。プレートが厚くなっているというのは、マントル部分が厚くなっているということでしょうか?そうであるならば、どのような仕組みでアイソスタシーは成立しているのでしょうか?教えていただけたら幸いです。 (05/22/06)

masa:社会人:28

A
 この辺のことは杉村新氏の「グローバルテクトニクス」という教科書(東大出版会)の第VI章「大洋底リソスフェアの生成」に詳しく書いてありますので,是非お読み下さい.
 まず,おっしゃるように,「プレートが厚くなっているというのは,マントル部分が厚くなっているということ」です.プレートは「リソスフェア」とほぼ同義で,(地殻)+(硬くて重くて冷たい最上部マントル)のことです.海洋底のリソスフェアの厚さ(d km)と年代(t Ma)の間には,d=7.5×(tの平方根)という関係があります(Maは百万年).つまり,できたてのリソスフェアは厚さ0 kmですが1億年前(100 Ma)のものは厚さ75 kmということになります.この75 kmのうち海洋地殻は表面の5 km程度で,残りはマントルです.
 アイソスタシーは海洋底全体でよく成り立っていることが,重力異常の測定からわかっています.しかし,大洋底では密度の大きいリソスフェアが密度の小さいアセノスフェアの上にあるために,リソスフェアが厚い部分は沈んでいます.これは地殻(密度小)とマントル(密度大)の間のアイソスタシーとは逆の関係になります(山脈など地殻の厚い場所は地形的に高くなっている).海洋下のマントルの密度の逆転構造(上のリソスフェアが重く,下のアセノスフェアが軽い)は根本的に不安定なので,この不安定を解消するために,プレートの縁でリソスフェアがアセノスフェアに沈み込んでいくと考えられています.
(05/23/06)

石渡 明(金沢大学・理学部・地球学科)

May 2012. The Volcanological Society of Japan.  kazan-gakkai@kazan.or.jp