火山についてのQ&A

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「Q&A火山噴火」

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Question #5901
Q こんにちは、初めまして。私は趣味で地学を勉強している自営業のものです。

溶岩の起源であるマントルを構成している岩石について質問があります。教えていただけるでしょうか?

太平洋の下のマントルは、レールゾライト岩やハルツバーガイト岩で構成されているようですが、日本の様な島弧の下のマントルはどの様な種類のかんらん岩で構成されているのでしょうか?太平洋(海洋底)の下と同じでしょうか?ある文献には、島弧の下はキュムレート岩?、メタキュムラスマントル岩?で構成されているとあります。ダナイト岩などのとけ残り岩で構成されているともあります。これらの岩石は、太平洋の下を作っている岩石から島弧の溶岩が形成された後に残ったマントル岩石と考えてよいのでしょうか?しかし、現在の火山活動で日本の下にダナイトなどの溶け残り岩が増えれば増えるほどマグマの源のレールゾライト岩などがなくなりますからマグマの生産は衰えていき、しまいには日本から火山活動がなくなるような気がします。このあたりが大変混乱いたしましてご質問しました。ご回答よろしくお願いいたします。 (09/05/05)

火山大好き人間:社会人:40

A 島弧の下のマントルも基本的にはレールゾライトからできていると考えて差し支えありません.海嶺下のマントルと同様にマントル対流の影響を受けて物質の入れ替わりがおこるので,初期地球において大陸地殻を形成した残存部分だけで島弧の下のマントルができているわけではありません.もちろん,マントル対流による攪拌が非常に効率的なわけではありませんから,詳しく調べると,名残りを留めた部分など海嶺下のマントルとの差異がある部分もあって若干の化学組成の違いはあると思いますが,大枠としての岩石の分類ではレールゾライトで良いでしょう.

島弧の下のマントルのもう一つの特徴として,沈み込むプレートからの物質の供給を不断に受けていることがあげられます.若いプレートの場合には沈み込んでマントル中に突っ込んだプレートそのものの上面が部分融解してマグマを発生させ,それが島弧直下のマントルと混合することがおこります.また,古くて冷たいプレートの場合には,プレートの中の含水鉱物が分解して生じた流体(水を主成分とするが,さらに様々な元素を溶かしている)が島弧直下のマントルに浸透して,やはりマグマを発生させやすいように島弧直下のマントル組成を変えていきます.

ちょっと変なたとえかもしれませんが,土の栄養が足りなくなって植木の育ちが悪くなったら肥料を足してやると地力が回復してまた植物が良く育つようになるようなもので,マグマを出して枯れてしまった島弧直下のマントルでも,マントル対流や沈み込むプレートからの新たな物質供給を受けて,マグマ生産力を回復しているといったところでしょうか.
(09/10/05)

安田 敦(東京大学・地震研究所・地球ダイナミクス)


May 2012. The Volcanological Society of Japan.  kazan-gakkai@kazan.or.jp