火山についてのQ&A |
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Question #5476 | |
Q |
以前地学を教えたころから疑問を抱いて幾年月、微妙なケースが出題されない入学試験はいいものの、刺さる小骨が気になるように、今となっては興味本位、学会ではどうなっているのか気になります。すなわち火成岩の分類表に、{火山岩,(半深成岩,)深成岩}と{(超塩基性岩,)塩基性岩,中性岩,酸性岩}という2成分でまとめた表がありますが、その後者の成分は{SiO2比,色指数,造岩鉱物の比率,酸化物の比率}のいずれをもって普通は定義されているのか宜しければ教えていただけないでしょうか。
(04/20/04)
AXY:高校生/大学生:28 |
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A |
日本の高校地学の教科書ではご指摘のような火成岩の分類表が用いられていますが,地質学,岩石学,地球化学などの学会では,国際地学連合 (IUGS) の分類案が尊重されています.これは,火山岩については,化学組成(主にシリカSiO2と全アルカリNa2O+K2Oの量)を用い,深成岩については鉱 物の量比(モード組成)を用いるやり方です.火成岩は鉱物の種類と割合で分類するのが基本ですが,火山岩はマグマの急冷によって形成されるために結晶の 成長が悪く,多かれ少なかれガラス(分子の構造は液体と同じ)を含み,ガラスの多い岩石(例えば黒曜石)は鉱物の量比では分類できないためで す.IUGSの分類案 (Le Basほか, 1986, Journal of Petrology, 27, 745-750; 1991, Journal of the Geological Society, London, 148, 825-833) によると,アルカリが少ない通常の火山岩は,SiO2=45-52%が玄武岩,52-57%が玄武岩質安山岩,57-63%が安山岩,63-69%がデ イサイト,69%以上が流紋岩(ただし,69%以上でもアルカリが非常に少ないものはデイサイト)となっています.IUGSの分類案は,「記載的である こと」,「解釈に基づかないこと」,「広く用いられている語であること」,「数値で区分されること」,「分類が単純であること」,「可能な限りモード組 成に基づくこと」,「不可能な場合は化学分析値によること」など10条の基本方針に基づいています. 火山岩と深成岩を一緒にした日本の教科書の分類表は,日本や外国の岩石学の専門書ではあまりお目にかかりませんが,非常にわかりやすく説明に便利なの で,今後も使っていけばよいと思います.縦に深成岩・半深成岩(2種類)・噴出岩,横に鉱物成分をとって岩石名を並べた表は,坪井誠太郎先生の「岩石学 I 」(1939岩波全書,手許にあるのは1950第7刷,p. 22の第3表)に載っており,恐らく戦後地学の教科書を作る時に,誰か気の利いた人がこの表にSiO2量の目盛りや鉱物量比の図を加えたのでしょう.そ の後1980年代に「半深成岩」が削除されて,現在の形になりました.教育的には優れた表だと思います. (05/05/04) 石渡 明(金沢大学・理学部・地球学科)
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