火山についてのQ&A |
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Question #4116 | |
Q |
三宅島の『特異体質』についてこれまで色々御教授頂きました。また、もう一つよろしくお願いします。 以前「三宅島の火道は極端に太い≒極端に放出ガスが多い」という事を教えて頂きましたが(#1829)もうこの火山の特徴として「極端に前兆現象の出現から噴火までの時間が短い(事もある)」という事があったと思います。常にガス抜き孔が口を開けている伊豆大島でさえ1986年の噴火の時は数カ月前から前兆があったと聞きます。三宅島の場合、1940年は一ヶ月の前兆がありましたがその後の2回の割れ目噴火の時は前兆現象の出現から噴火まで数十時間程度だったと聞きますし2000年の噴火にしても前兆の出現から最初の海底噴火までは10数時間だったと記憶しています。三宅島の前兆の極端な短さは「太い(であろう)火道」と関係があると考えてよろしいでしょうか。 よろしくお願いします (08/01/03) アマンタジン(いつもありがとうございます):医師:28 |
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A |
前回述べた太い火道は2000年噴火時のカルデラ陥没事件で形成されたもので,それが現在まで続く大量の火山ガス放出につながっていると考えています.
歴史記録に残っている噴火14回のうち,山頂噴火が起きているのは不確実なものを含めても5回に過ぎず,山頂につながる火道は,伊豆大島と違っておそら
くほとんど閉塞していたのではないかと考えられます.
伊豆大島の山頂噴火の場合,ほとんど地震,つまり岩石の破壊を伴わずに噴火に至ります.これは火道をわざわざ新たに破壊しながら作る必要がなかったこと を示していると考えられます.伊豆大島1986年の噴火の場合,初めて火山性微動が観測されたのは同年7月ですが,マグマが三原山火口に出現したのはそ れから4ヶ月後でした.それだけゆっくりと上昇してきたと言えます.むしろゆっくりとしか上昇できないのに,火道が確立していたので上昇できたのかもし れません. 一方,伊豆大島でも1986年噴火の山腹噴火の前兆は,三宅島の割れ目噴火と同じく,噴火の数時間前から始まった地震活動でした.三宅島の割れ目噴火と 同じくマグマが岩石を割りながら急速に上昇してきたのでしょう.おそらく,新しく割れ目を作って噴火に至るには,それだけ急速なマグマの上昇が必要で, その結果として前兆から噴火までの時間が短いのかもしれません.
なかなか難しい質問で,まだ断定はできませんが,こういう風に考えてみてはどうかと思います.
川邉禎久(産業技術総合研究所・地球科学情報部門)
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