火山についてのQ&A |
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Question #41 | |
Q |
化学組成が一定とした時、揮発性成分の含有量が高くなると、
何故マグマの粘性度が下がるのでしょうか。ただ、この事も、
気泡のサイズが大きい時に当てはまり、サイズが小さい時には
粘性度は逆に高まるということなのですが、その理由も教えて
頂きたいのですが。よろしくお願いします。
(9/16/97) |
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A |
揮発性成分の含有量が高くなるとマグマ粘性度が下がるかどうかを考える場
合、その揮発成分がマグマに溶けているか、あるいは気泡として析出している
かによって考え方がことなります。
(1)溶けている場合
マグマの粘性は、基本的にマグマ中の元素の化学結合の程度によってきまって
います。マグマは液体ですので、マグマ中で元素は不規則な配置をしています
が、ある程度元素同士が化学的に結合している状態にあります。化学結合の程
度は化学組成によって変化します。たとえば、珪酸が多くふくまれると相対的
に元素同士が強く結合してマグマの粘性があがります。揮発成分はマグマ中の
元素の結合を弱める性質があるため、揮発成分を多く溶かしこんでいるマグマ
の粘性は小さい傾向があります。
(2)気泡がある場合
液体と気体の混合物の粘性というのは、その混合物に力(正確には応力)を加
えた時の変形のしやすさによって決まっています(それが粘性の定義)。言う
までもなく、変形しやすいものほど粘性が小さいことになります。気泡のサイ
ズが大きいときには気泡そのものが変形しやすいので、混合物全体としても変
形しやすくなり、実効的な粘性が低下します。しかし、気泡のサイズが小さく
なると気泡は表面張力のために球形を保ったまま変形しないようになります。
この場合、混合物全体は、液体が変形する(気泡の間を流れる)ことによっ
て、はじめて変形することができるようになります。このとき、気泡の存在は
液体の変形にとって邪魔な障害物でしかありません。したがって、混合物全体
の実効的な粘性は増加することになります。なお、混合物の実効的粘性につい
ては、未だ研究の発展段階で、単純な公式があるわけではありません。ここで
説明したことは、定性的な概略であると理解してください。
(9/16/97)
小屋口剛博(東京大・地震研)
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