火山についてのQ&A

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「Q&A火山噴火」

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Question #2639
Q 富士山のマグマ溜まりについて質問します。
以前、富士山で低周波地震が多発したとき、富士山のマグマ溜まりは低周波地震が発生している地下10〜20キロメートルより、さらに下の地下25キロメートル付近にあると聞き大変驚きました。なぜなら日本の他の主な火山のマグマ溜まりの位置は浅いもので地下数キロメートル、深いもので地下10キロメートル前後と思っていたからです。
そこで質問なのですが、実際に富士山のマグマ溜まりは日本の他の火山のマグマ溜まりに比べて深いのでしょうか?また、もしそうならどうしてでしょうか? (09/11/02)

しろしろ:フリーター:24歳

A
 富士山のマグマ溜まりについてお答えする前に、マグマ溜まりがどうしてできるか を考えてみます。
 火山の下にマグマが貯蔵されているマグマ溜まりのあることは確かだと考えられて います。日本のような島弧の火山では、海洋プレートの沈み込みによって、100kmか ら150kmの深さでマグマが作られます。このマグマはまわりの岩石より軽いので上昇 しはじめますが、まわりの岩石の密度は浅くなるにつれて小さく(軽く)なるのでだ んだん密度の差がなくなってきます。このため、マグマはついには上昇し続けること ができず、一旦、上昇を止めて集まります。この場所にマグマの溜まりができます。 ここでマグマのなかの比較的重い成分が結晶となって取り除かれ、液体のマグマは軽 くなり、再び上昇をはじめます。マグマが地表に達して噴火するまでには、何回も一 時停止しては軽くなるはずなので、マグマの溜まりは1カ所ではなく、何カ所にもで きると考えられています。
 地中を目で見ることができないので、マグマ溜まりの探すのは簡単ではありませ ん。火山学者は火山の下を調べる方法として、地震波の伝わる速度や吸収のされ方に 注目しています。マグマがたくさん溜まっているところでは、地震波の伝わる速度が 小さくなったり、地震波のエネルギーがたくさん吸収されてしまうので、地震波の伝 わる様子を詳細に調べればマグマ溜まりのありそうな場所の見当をつけることができ そうだからです。
 1990年ころに行われた研究では、富士山の下、深さ25kmくらいの深さに地震波が周 辺よりゆっくり伝わる領域が見つかりました。この地震波速度の小さい領域がマグマ の溜まりの可能性があります。それよりも浅いところにマグマ溜まりがあるかどうか は、富士山の山体に地震観測点がまだまだ少なく、はっきりしたことがわかりませ ん。現在、富士山の観測点が強化されていますので、富士山直下の浅い場所の様子も 分かってくることが期待できます。
 他の火山のマグマ溜まりも、まだ、その大きさや深さがはっきりわかっている例は ほとんどなく、マグマ溜まりの姿を明らかにすることは、21世紀の火山研究の重要 な課題になっています。
 (09/16/02)

鵜川元雄(防災科学技術研究所・固体地球研究部門) --


May 2012. The Volcanological Society of Japan.  kazan-gakkai@kazan.or.jp