火山についてのQ&A

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「Q&A火山噴火」

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Question #217
Q 赤城山の噴出物である鹿沼土は 何で新潟県側の方にはふりつもらなかったのですか? また、何故鹿沼土は繊維状のものやガラス状のもの がみられるのですか? また、鹿沼土に含まれる鉱物を教えてください そして赤城山はどのような火山なのですか 噴火時のマグマの性質や噴火形態を教えてください できるだけ分かりやすく教えてもらえるとうれしいです。
(5/30/99)

疑問:学生:13歳

A (1)赤城山の噴出物が新潟県側の方にないのは 最も簡単いえば,風向きのためです. 鹿沼土はおよそ3万2千年前に赤城火山で発生した爆発的な噴火でもたらされました. 鹿沼降下軽石(鹿沼土の学術的な名称)の厚さの変化,分布,軽石粒の変化をみてみ ますとそのときの噴火(プリニー式噴火といわれる噴火様式)は以下の通りと思いま す. 鹿沼土をもたらした噴火に際しては,噴煙柱とよばれる軽石(鹿沼土),火山灰,火 山ガスからなる高温な噴煙が数10km以上の高さをもって,赤城火山の上空に形成され ました.数10km上空は成層圏と呼ばれていますが,日本列島の上空ではこの高さでは 偏西風と呼ばれる強い風が常時吹いています.このため噴煙柱に含まれる軽石や火山 灰はこの風に運ばれ,西から東に移動します.軽石や火山灰はいずれ重力に従い地上 にふってきます.このようにして鹿沼降下軽石の大半は赤城火山から東方面だけに降 り,新潟などには降ることがなかったのです. なお,このような鹿沼土と同じような軽石は日本で多くのものが知られていますが, そのほとんどのものが偏西風に運ばれたため,給源の火山から東側だけに分布してい ます. (2)鹿沼土に含まれる鉱物 角閃石,斜方輝石,磁鉄鉱,斜長石などが含まれています. (3)赤城山はどのような火山か およそ50万年前くらいから活動をはじめた火山です. 活動のはじめ頃は溶岩流を流すなど比較的おだやかな噴火が主体でしたが,最近15万 年間くらいは軽石や火砕流を噴出させる,爆発的な噴火が卓越しています.ただし最 近では噴火の間隔が長く,3万年前頃に噴火があった以降にはっきりとした噴火の証 拠はありません. 赤城火山は富士山と同様に成層火山と呼ばれるものです.これは何百回もの噴火によ り徐々に大きく成長したものです.富士山ほどきれいな形をしていないのは古くから 活動しているために浸食により火山体に谷が形成されていること,長い活動の間に山 頂付近でカルデラが形成されたこと,おそらく噴火に関連して山体が大きく崩れたな どの歴史をもつからです. (3)噴火時のマグマの性質や噴火形態について 安山岩質とよばれる性質で,日本では最もありふれた性質を持っています. ものすごく単純化すれば,初期の頃は玄武岩に近いもので,後期のものは石英安山岩 質に近いものになっています. この様な性質の変化にともない,初期では,溶岩流流出,ストロンボリ式噴火が多く, 後期になり火砕流や軽石を噴出するプリニー式噴火が多くなりました. (6/5/99)

鈴木毅彦(東京都立大学・大学院理学研究科・地理学教室)


May 2012. The Volcanological Society of Japan.  kazan-gakkai@kazan.or.jp