火山についてのQ&A

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「Q&A火山噴火」

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Question #191
Q 火山の質問箱をはみ出すのかも知れませんが、学校以来、あの火山岩−半深成岩−深成岩(縦軸)と珪長質−苦鉄質(横軸)の表を何回も 見る機会があります。そこで質問ですが、火山岩の代表として安山岩、深成岩の代表として花崗岩が日本全体ないし県規模の地質図では地表 分布面積が多いようにおもいます。安山岩は地表火山熔岩として地質時代も噴出していたというのはわかるような気がしますが、一方、広大な 面積や点分布をしている花崗岩は、地下深所(10〜15kmぐらい?)でゆっくり冷却したと理解しています。とすると、花崗岩はどういう理由で地 表火山になれなくて地下深所にとどまったものなのでしょうか。また、現在花崗岩が冷却生成中の場所の見当がついているのでしょうか。また、 地殻変動・隆起浸食作用で花崗岩を現在、地質図の地表地質としてみているのでしょうか。
(2/5/99)

市井では地質の”プロ”と称して生計を立てているおじさん:会社員:45

A
  広義の花崗岩(花崗閃緑岩や石英閃緑岩を含む)は,全く独立した深成岩体とし て産する場合もありますが,火山・深成複合岩体として産する場合も多く,例えば 「コールドロン」がその例です.コールドロンでは,溶岩や凝灰岩からなる成層火 山のカルデラ状陥没体の中心部や,環状の陥没断層に沿う周縁部に花崗岩類が貫入 しています.これは,火山体を形成したマグマ溜まりそのものが,地下数kmの浅い ところまで上昇してきたことを示します.例えば,米国カリフォルニア州のLong Valley Caldera (長径30km)の中心部には再生ドームがあり,その直下数kmには 「現在冷却・生成中の」花崗岩体の存在が推定されています.大きなカルデラをも つ安山岩〜流紋岩質の火山の下には,必ず花崗岩体が形成されつつあると見てよい でしょう.


 「花崗岩はどういう理由で地表火山になれなくて地下深所にとどまったものな の」かはわかりませんが,マグマにとっては,地表に噴き出すよりも地下にいる方 が楽(エネルギーが少なくて済む)でしょう.しかし,そればかりでなく,実際地 表に火山体を作ったけれど,それが既に侵食されてしまった場合も多いと考えられ ます.例えば,九州の大崩山コールドロンでは,火山岩は一部残っているのみで, 基盤岩に貫入した花崗岩体や環状岩脈が広く露出しています.しかし,前述のLong Valleyや愛知県の設楽コールドロンでは,まだ花崗岩は露出していません.これは 単に侵食・削剥のレベルの違いであると思われます.飛騨山地では約100万年前に 形成された花崗岩体が既に地表に露出している例が知られており,これは世界で一 番若い花崗岩体として有名です.侵食速度は結構速いのです.日本の花崗岩の多く は5000万年〜1億年前のものですから,既に火山体は完全に侵食され,深成岩体が 地表に出ていても不思議はありません.


 なお,花崗岩の貫入深度は,接触変成帯の鉱物組合せで,ある程度判断できま す.通常の泥質岩に菫青石が多く出てざくろ石があまり出ない接触変成帯を持つよ うな普通の花崗岩体は,だいたい地下10kmより浅いところに貫入したと見てよい でしょう.一方,ざくろ石が多くて菫青石がほとんどなければ,それより深かった と考えられます.ざくろ石と菫青石が共存している場合,温度が同じなら,圧力が 高いほどどちらも鉄が少なくなり,マグネシウムに富む傾向があります. (2/8/99)

石渡 明(金沢大学・理学部・地球学科)


May 2012. The Volcanological Society of Japan.  kazan-gakkai@kazan.or.jp