火山についてのQ&A |
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Question #186 | |
Q |
マグマ溜りに溜まっていたマグマが、噴火に至るまでのメカニズムについて
質問させて頂きます。
マグマ溜りに溜まっていたマグマを地表に上昇させるドライビングフォー
スは、蓄積による圧力増加と気泡の発泡による浮力の増加と習いました。
ここで疑問に思ってしまう事は、蓄積による圧力増加によりマグマに対す る揮発性成分の溶解度が上がる事で、気泡の発泡が起こりにくくならない のかと言う事です。つまり、マグマ溜りでの発泡を促すような現象(温度上 昇・温度下降に基づく結晶分化作用・地震等)の効果を、蓄積による圧力増加 は打ち消す方向に働かないのかと言う事です。例えば、この圧力増加はマ グマ溜りの周囲の岩石(地表に繋がる天井部分も含む)を破壊する方にだけ使 われたりするだけなのでしょうか?火山について勉強したての身ですので、 見当違いの事をお聞きしているかもしれませんが、よろしくお願いします。
(1/30/99) |
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A |
質問の現象は,ビールやコーラの瓶を栓したまま振ると泡立ちますが,直ぐに泡 は消えてしまうことに良く似ています.栓を抜くか,瓶が割れないかぎりビールは 自由には泡立たないでしょう. マグマが発泡するには,液体部分(メルト)に融けている揮発性成分量が,その 溶解度を「大きく」上回ることが必要です.このような現象は,冷却による結晶作 用の進行や,上昇による減圧によってもたらされます.マグマを閉じ込めている容 れ物(マグマ溜まり)の体積や形が変化しなければ,栓をしたビール瓶と同じで, メルトが飽和状態からやや過飽和状態になったまま発泡せず,不安定な状態で地下 に居続けようとします.しかし,冷却による結晶作用の進行でメルトの固化が進む と,内容物(メルト+結晶)全体の体積が小さくなるため,容れ物のすき間を補う ように,過飽和状態になったメルトからは気泡が成長します.このような軽い気泡 の成長によって,マグマの平均密度が急に小さくなるために浮力で容れ物に変形が おきることがあります.あるいは,下から新たなマグマが無理やり注入されて圧力 が高まれば,ついには容れ物が破壊されてマグマは上昇し始めることになります. この結果,減圧によってマグマでは急激な発泡がおこり,噴火に至ることになりま す. 大きな地震など外からの振動が,揮発性成分に過飽和状態のマグマに対して,発 泡の引きがねや発泡の促進を行う作用となる可能性が考えられます.この結果,内 圧が高まっている容れ物の変形や破壊がおこり,さらにマグマが激しく発泡・上昇 して噴火が誘発されることがおこりうるでしょう. (2/15/99) 中田節也(東京大学・地震研・火山センター)
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