地球は,内部に多量の熱をたくわえていて,地下では深いところほど温度
が高くなっています(通常の場所では深さ100mにつき3℃程度).しかし,
深いところほど圧力も高くなり,圧力が高いと岩石の融解温度も高くなっ
て,岩石は融けにくくなるので,大陸や海洋の通常の場所では,どの深さで
も,地殻やマントルの岩石が融けるほどの温度にはなっていません.
ところが,マントルの岩石(かんらん岩)がゆっくりと(1年に数mm〜
数cm程度)上昇する流れがある場所では,地下深くにあった高温の岩石
(1400℃程度)が浅くて圧力の低い場所に運ばれるので,そこで岩石がわずか
に融解し,玄武岩質のマグマが発生します.マグマは周囲の岩石より軽いの
で,集まりながら上昇し,ついには地表や海底に噴出して火山をつくります
(噴出時の玄武岩マグマは1200℃程度).大洋中央海嶺の下には,マントル
が湧き上がって両側へ拡がる流れがあり,海嶺の中軸地溝帯に沿って活発な
火山活動が起きています.アイスランドやアファー三角地帯では,海嶺の火
山活動の様子を陸上で見ることができます.ただし,海嶺から離れた場所で
も,スポット状のマントル上昇流(プルーム)によって,大きな火山体が形
成されることがあり,ハワイに代表されるこのような場所をホットスポット
と呼びます.
海溝は,逆に下へ向かうマントルの流れがある場所で,そこではマグマは
発生しません.しかし,斜めに沈み込む冷たいマントルの上側には,熱いマ
ントルが浅いところに上がってきていて,そこで発生したマグマが,海溝と
平行に伸びる数列の島弧火山帯をつくっています.東北日本の那須火山帯や
鳥海火山帯はその例です.海溝からは,多量の水を含んだ海洋底の堆積物や
変質して水を含んだ海洋地殻の玄武岩が,冷たいマントルと一緒に沈み込み
ますが,深く沈み込むと温度が高くなるので水が放出され,この水が上側の
熱いマントル中に浸透して,そこの融解温度を下げて岩石を融け易くすると
ともに,海嶺やホットスポットとは違った,島弧特有の水に富むマグマを形
成すると考えられています.
(11/29/98)
石渡 明(金沢大学・理学部・地球学科)
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