火山についてのQ&A

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「Q&A火山噴火」

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Question #120
Q 「SiO2の含有量が増えるとマグマの粘性が高くなる」 もう何年も当たり前のようにそう思ってきましたが,何でだろうとふと疑問に思い, 手近な本で調べてみましたが,よさそうな答えが見つかりません. なぜだか教えて下さい.

(9/3/98)

地質の学生:学生:21

A
 久城育夫・荒牧重雄編、岩波講座地球科学3、地球の物質科学II、 「火成岩とその生成」195ー206ページの「マグマの粘性」(久城育夫執 筆)を読むと「珪酸塩メルト(マグマ)においては、Si-O結合が基本構造をつ くっており、Si-O-Siの結合の程度によって粘性が変化するらしい。たとえ ば、SiO2のメルトに....金属酸化物を加えると、連続したSi-O-Siは金属 原子が途中に入ることによって切れたり、あるいは弱い金属結合が間に入る ことで、その付近の結合が弱くなったりする。その結果、粘性も低下すること になる」と書いてあります(カッコ内は石渡が追加)。


 要するに、Si以外の金属元素、特に鉄やマグネシウムを多量に含む玄武岩質 のSiO2の少ないメルトは、Si-O結合が金属元素に断ち切られているので粘性が 低いというわけです。これは、言葉を換えれば、SiO2分子の重合度が低くなっ ているとも言えます。たとえば、基礎的な有機化学で、メタン・エタン・プ ロパン・ブタン....と重合度が高くなるに従って、化合物の性質は気体か ら液体(石油)、半固体(ろう)へと変化し、液体の粘性も重合度が高い分子 ほど大きくなるのを思い出すと、よく理解できます。マグマ中ではSiO4四面体 が立体的な編み目構造をつくって大きな「SiO2分子」になっていると考えら れますが、この分子の大きさは、鉄やマグネシウムなどの邪魔者が少ない(つ まりSiO2が多い)ほど大きくなると考えれば、上で述べたアルカン類(パラフ ィン系炭化水素)との類似で理解しやすいと思います。但し、アルカン類で は、一般に重合度の大きいものほど融点が高いですが、マグマでは、SiO2の多 いものほど融点(結晶化温度)が低いので、このアナロジーには限界があり ます。


 詳しくは、上記の本を読んでください。 (9/4/98)

石渡 明(金沢大学・理学部・地球学科)


May 2012. The Volcanological Society of Japan.  kazan-gakkai@kazan.or.jp