火山についてのQ&A |
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Question #102 | |
Q |
5月に霧島山高千穂峰を登山し、天候不順のため御鉢火口までしか行けなかったので、7月に再度挑戦し、高千穂峰山頂まで行きました。 御鉢火口の縁を歩いていて気がついたのですが、スコリアの堆積が赤い部分と黒い部分とではっきり違いが見受けられます。背門丘側の方が黒いスコリアが多いのはなぜでしょうか? 高千穂峰は、成層火山の山頂にあった火口が溶岩ドームで覆われているとのことですが、御鉢火口は、この溶岩ドームのためにマグマが高千穂火山の弱線上に噴火したと考えていいでしょうか?また、火山学的に高千穂峰の溶岩ドームで覆われた火口が噴火することは将来的にあるのでしょうか? 御鉢火口直下の登山道に赤いスコリアに混ざり少し緑灰色の硬い岩類が見受けられますが、私の感では溶岩流に思えるのですが正解ですか? 少し、長くなりましたがよろしくお願いします。
(7/12/98) |
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A |
ご質問には「背門丘の方が」とありますが,どこと較べられているかがわか りませんので,十分にお答えできませんが,以前お答えしました(Question #-78)ように,スコリアの赤/黒は含まれる鉄の酸化の状態によります.一般 には酸素が十分にある状態でゆっくりと冷えると赤くなります.大きなスコリ ア粒子の中には,(空気に接していた)外側が赤く,(酸素がほとんどない状 態で冷えた)中心部が黒いものが見られます. また,厚いスコリア層では地面と大気に接した下部と上部が赤く,その中央部 が黒いという事もあります.背門丘は御鉢火口の東側ですね,どのような状態 でスコリアが堆積したか考えてみて下さい. 高千穂峰に溶岩ドームという「栓」があったために御鉢が現在の位置にでき たかどうかについては,よくわかりません.ただ,高千穂峰の山群は,東から 二子石,古高千穂,高千穂峰,御鉢と,東西に並んだ4つの火山体で構成され ており,その年代は東から西に向かって若いということがわかっていますの で,「栓」が原因と考えなくてもよいのかも知れません.東西に並んだ火山列 からわかるように,このならびにマグマの出やすいところがあるようです.将 来,御鉢の西麓の高千穂河原に新しい火山ができるかも知れません.火口をふ さいだ溶岩ドームを吹き飛ばして噴火が起こるということは珍しいことではあ りませんから,将来的に高千穂峰で噴火が起こらないとは言い切れません. どこの登山道のどのあたりのことかわかりませんので,質問に直接お答えで きませんが,高千穂河原から御鉢へ登山道の1200m付近より上では,登山道の 南側に大きな窪みがあって,それが御鉢の火口縁まで続いているのをご存じで しょうか?実はこの窪みは溶岩の通った跡なのです.御鉢の火口縁は西側が最 も低く,溶岩はそこから溢れ出して西斜面を流下したのです.登山道はこの溶 岩流が作った堤防の上についています.登山道脇のこの窪みの中には厚さが1m 以下の薄い緻密な溶岩が見られます. (7/17/98) 井村隆介(鹿児島大学・理学部)
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