火山についてのQ&A |
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Question #101 | |
Q |
国内規模、あるいは世界規模で、火山活動の活発な時期とそうでない時期があると思うのですが、具体的にそれを示すような資料がありましたら、教えていただきたいと思います。また、その中で現在の火山活動の位置づけ(つまり、現在は比較的活動的な時期なのかそうでないのか)を教えていただきたいのですが。
過去に近隣の火山がほぼ同時期に噴火するようなパターンが知られているようでしたら、具体的に教えてください。
(7/11/98) |
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A |
ご質問の内容は2つありますが,まず,火山活動の時代的な消長についてお 答えします. 世界の火山活動についてまとめた,Smithonian Institution監修の Volcano of the World(second edition) Geoscience Press, Tucson, AZ, 1994, ISBN 0-945005-12-1 が参考になると思います.それによると,地球全体のマグマの年間平均噴出量 は約4立方キロメートルで,その4分の3程度は,海洋中央海嶺で噴出してい ます.しかし,海洋中央海嶺における活動度の消長については,なにぶん海の 底のことでありよく判りません.一方,日本も含めてプレートの沈み込み帯の 火山の多くは陸上火山を形成し,その活動は人によって観察されてきました. またハワイ島などの海山(ホットスポット)の火山活動も観察されています. これらの観察されている火山の活動度についてみると,その年々に活動したと 報告された火山の数自体は歴史的に急増しているのですが,これは人類文明の 進展にほぼ対応していて,しかも社会的事情で報告数は左右されているので活 動度の消長といえるものがあるのかどうかよく判らないといわざるをえませ ん.ただし,0.1立方キロメートルを越すような量の噴出物を伴う比較的大規 模な噴火は見逃されていないと考えれば,その数は19世紀以降世界中で年間 に0回から4回の回数を数えていて,その回数の時代的変化にはっきりした規 則性は見られません.なお,個々の火山についてみればその火山固有の周期性 が見られることはあります.日本列島で第四紀に噴出した噴出物の量と年代の 関係をまとめるプロジェクトは現在進行中です. ところで,以上は平常時における話ですが,時折,巨大な噴火が起こること があります.例えば鹿児島県の姶良カルデラでは2万5千年前に450立方キ ロメートルを越す噴出物を伴う巨大な噴火が起こりました.この規模の噴火は 日本列島だけでも過去10万年間に約10回という割合で起こっています.ま た,洪水玄武岩と呼ばれる巨大な溶岩が噴出することもあります.例えば北米 西岸のコロンビア台地では1700〜1500万年位前に総量15万立方キロ メートルを越すような膨大な玄武岩が噴出しました.中生代末のデカン溶岩台 地などもそのひとつです.このような大規模な噴火のない現在は比較的平穏な 時代というべきかもしれません. もうひとつの質問,近隣の火山が同時期に噴火する例としては以下のものが あります.小アンチルス諸島のプレー火山とセントヴィンセント火山は1日違 いで噴火し,その5ヶ月後にはグアテマラのサンタマリア火山が噴火しまし た.日本では,1983年の三宅島,86年の伊豆大島,89年の伊東沖の噴 火が連続した例があります. なお,以下の本も参考となります. 火山噴火と災害,宇井忠英 編,東京大学出版会 1997年発行、A5版219ペー ジ、定価3700円(税別) (7/15/98) 三宅康幸(信州大学・理学部)
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